一般質問・答弁ともに要約しております。

1 障害者の工賃向上について

障害のある方が地域の中で自立して、自分らしく生き生きと暮らすためには、それぞれの障害の特性に応じた就労機会があること、何よりもその対価となる工賃がしっかりと確保されることが重要である。
就労継続支援B型事業所で支払われる月額工賃の全国平均額は、令和2年度実績で、15,776円となっており、障害者年金と合わせても経済的に自立して生活していくことは困難との話も聞く。
一方、本県の状況を見ると、令和2年度時点で、平均工賃が月額で14,349円と、全国平均にも届かない状況である。
県共同受発注センターにおいては、就労継続支援B型事業所が企業等から多くの仕事を受けられるよう、専門員が企業等への働きかけを行うとともに、業務のあっせん等に取り組んでいると聞くが、工賃を更に向上させていくためには、単に受注業務を増やしていくだけでなく、より工賃の高い業務への転換を図っていく取組みが必要と考える。
そこで、障害のある方が地域の中で自立し、生き生きと暮らしていける社会の実現に向けて、今後、どのように障害者の工賃の向上に取り組んでいくのか、知事に伺う。

1 知事答弁

就労継続支援B型事業所においては、工賃水準の向上を図ることが大変重要であると考えるが、県内事業所における月額工賃の水準は、令和2年度の実績で全国39位と低位にとどまっている。
このため、「茨城県共同受発注センター」に配置した専門員が、発注側企業等へ出向き、新規案件の発掘や取引条件の交渉等を通じた案件獲得に注力してきた。
本年3月に策定した第2期県総合計画においても、令和7年度までに全国10位に相当する月額19,211円を目標としており、工賃向上の取組を加速していく。
目標の実現には、如何に工賃の高い業務への転換を図っていくかが鍵となるため、今後は、工賃水準が高く、比較的多くの事業所が新たに取り組みやすい清掃や農作業などの施設外就労の案件発掘と斡旋の取組を強化していく。
一方、こうした業務転換を円滑に進めていくためには、個々の障害者の特性に応じた 業務の切り出しや、障害者をサポートする支援員の施設外就労における安全管理などのノウハウや経験が必要となるため、支援員を対象とする施設外就労の体験会や成功事例等の紹介を通じて、支援員の資質向上を図っていく。

再質問
障害者の工賃向上には事業所の意欲を高めていくことが大事であると考えるが、今後どのように取り組んでいくのか伺う。

1 【再質問】知事答弁

成功事例等について情報提供するとともに、事業所の職員等を講師とするセミナーの開催を通じて、意欲喚起に努めていく。


2 デスティネーションキャンペーンを契機とした県北地域の振興について

来年秋に開催される茨城デスティネーションキャンペーンに先駆け、先月からはプレキャンペーンが始まった。
キャンペーンでは、アウトドアなど県内の様々な観光コンテンツを組み合わせた「茨城の旅」を発信していくとのことであり、海や山など多彩なアウトドア資源を有する県北地域での取組が、大きな注目を集めるものと期待する。
現在県では、県北6市町を巡る茨城県北ロングトレイルの整備を進めている。多様な地形と景色に触れながら、点在する自然や歴史、食や温泉といった地域資源を巡ることで、アウトドアと観光を同時に楽しむことができ、現在53kmのルートが整備され、今年度は常陸太田市から日立アルプス方面への整備を進めていると聞く。
多くの方々が県北ロングトレイルに訪れている状況を発信し、地元の関心を高め、市町の積極的な関りや観光関係事業者等の参入にもつなげていただきたいと考える。県北ロングトレイルの魅力向上と誘客を促す取組が、県北地域の振興に大きく寄与する。
そこで、県北ロングトレイルの整備進捗を伺うとともに、デスティネーションキャンペーンを契機とした県北地域の振興にどう取り組むのか、政策企画部長に伺う。

2 政策企画部長答弁

県北ロングトレイルは、今年度、常陸太田市から日立アルプスの高鈴山や御岩山を経由し、花貫渓谷へ抜けるルートについて整備を進めているところであり、この区間の開通により、総延長100キロメートルを超える、全国有数の距離を誇るコースとなる。
これまで、初心者から登山愛好家まで幅広い層へのPRに取り組み、今般のプレキャンペーンにおいても、オープニングセレモニーをはじめとする様々な機会を捉えて、広報活動を展開しているほか、ホームページで紹介するなど情報発信にも努めてきた。
コースに設置したカウンターの推計では、今年度年間8,000人以上の来訪が見込まれ、ハイカーによるSNSなどへの投稿件数も急増している。
引き続きコース整備を進めながら、周辺の食や温泉、宿泊施設、史跡、アクティビティなどに来訪者を誘引する仕掛けづくり進めることで、山と街を巡る新たな人の流れを生み出し、滞在時間の拡大や消費喚起を図っていく。
また、多くの方が訪れている状況を発信することでブランド価値を高め、更なる誘客を図り、市町や事業者等の参画意欲向上にもつなげていく。

再質問
県北ロングトレイルは、ポストコロナにおけるインバウンド施策として、魅力的なコンテンツになると考える。インバウンド施策にどのように取り組むのか伺う。

2 【再質問】政策企画部長答弁

外国人向けの情報発信にも取り組むほか、世界中から注目されるトレイルコールを有する、ヨルダン・ハシェミット王国の駐日大使を招き、パネルディスカッションを開催するなど、国際的な知名度向上にもつなげていく。



3 AIバスの活用等による地域公共交通の充実について

市町村においては、地域住民の身近な移動を支えるため、コミュニティバスや乗合タクシー等のコミュニティ交通の運行に取り組んでいるが、人口が少なく財政基盤が脆弱な市町村においては、今後コミュニティ交通の存続ができなくなる恐れもある。
こうした課題を解決するひとつの手段として、AIシステムを活用したデマンド交通の役割に大変注目している。
このシステムの特長は、ルートを固定せずに、利用者の呼び出しに応じてAIが最適な経路と時刻を算出し、バスや乗合タクシーの運行を効率化できるところにある。
運賃以外の収入源の確保も重要になるが、例えば、高齢者の移動の目的地となることが多い医療機関やスーパー等から協賛金を集めれば、それらの財源を活用し、高齢者の運賃を割り引くことができる。高齢者の外出が増えることで、健康増進や医療費の抑制、市街地の活性化もできると考える。
そこで、AIバスの活用等による地域公共交通の充実に向けて、今後どのように取り組んでいくのか、政策企画部長に伺う。

3 政策企画部長答弁

県では、市町村におけるコミュニティ交通導入の立ち上げ支援等を行っており、現在、9割を超える市町村において、コミュニティ交通の導入が図られている。
令和3年度には、デジタル技術の活用による利便性向上等により地域の実情に即した新たな移動サービスへの転換を図ろうとする市町村に対し、立ち上げ費用の一部を支援する「新たな移動サービス導入等支援事業」を創設しており、大子町や高萩市などデジタル技術を活用したコミュニティ交通の利便性向上に取り組む市町村も増えている。
AIバス等の活用にあたっては、地域の実情に合わせて運行エリアや運行車両の台数を設定することで、より効率性・利便性の高い運行が可能となると考える。
また、医療機関や金融機関のほか、地元のショッピングモール、工場、薬局などからの協賛金及び停留所設置の登録料などにより運賃以外の収入源を確保する事例に加え、乗合タクシーのオペレーター経費を複数の市町村で共有化することにより経費を節減している事例があり、先進的な取組を参考にしながら、運賃収入以外の副収入の獲得など収支改善につながるような仕組みづくりを市町村とともに検討していく。

再質問
AIバスはある程度面積が限られたところの方が使いやすいと思うが、市町村全域などで運行している事例や、またその地域ではどのような結果になっているのか伺う。

3 【再質問】政策企画部長答弁

大子町や行方市で各市町の全域で運行されている。それぞれ各地域から中心部に向かう利用が多くみられ、路線バスの通らない地域などもカバーされており、利用者からは好評を得ていると伺っている。大子町では、曜日によって対象を変えるなど運用面で工夫を図り、利用者も徐々に増えていると伺っている。



4 住宅のインスペクションの活用について

インスペクションは、専門家である建築士が、既存住宅の基礎や外壁など構造耐力上主要な部分や雨漏り・水漏れ等の状況を調査するものであり、活用促進により中古住宅の流通拡大や空き家対策に寄与する。
総務省の統計調査によれば、我が国の空き家率は約14%と高く、持続可能な社会の実現のため、新築から活用可能な既存の住宅に目を向け、長期にわたって地域の資源や技術を受け継いでいくことが理想であると考える。
アメリカやイギリスなどでは、全住宅流通量の8割以上を中古住宅が占めるが、日本で約15%と極めて低い数値で推移している。
中古住宅の流通拡大は、住宅リフォームの需要を喚起し、県北地域が誇る県産木材の新たなニーズを生み出す効果もある。
インスペクションの活用が進めば、消費者が安心して中古住宅を取引できるようになり、流通が活性化するものと考えるが、インスペクションが浸透してきたという実感はなく、もっと行政が積極的に関係団体との連携を強化してその活用に取り組むべきと強く感じている。
そこで、インスペクションの現状やこれまでの県の取り組み状況、また、どういったところに課題があると考えているのか、土木部長に伺う。

4 土木部長答弁

国では、インスペクションに関し、ガイドラインの作成や、検査基準の明確化と全国統一の講習制度創設を行うなど技術者の育成を図ってきたほか、平成30年には宅地建物取引業法の改正により、インスペクションの実施の有無を重要事項説明項目として追加するなど、法整備も進んでいる。
このような中、県では、空き家対策の一環として、市町村向けの手引きを作成し、インスペクションの補助制度を円滑に創設できるよう支援してきたところであり、また現在、県内約460名のインスペクションの技術者が登録されているほか、インスペクションを県民に認知してもらうためのチラシを作成し周知に努めている。
一方、国のアンケートでは、約8割が一般の方の制度に対する認知度の低さ課題として挙げており、また、不動産業界においては、法的義務のないインスペクションに対する活用の意識に業者間の温度差がある。
インスペクション制度に対する認知度の向上や積極的な業者を増やしていくことなどが、活用促進にあたっての課題であり、業界と連携しながら、課題解決を図ることが重要であると考えている。

再質問
購入者が安心して中古住宅を購入できるような仕組みづくりが必要であり、この仕組みを積極的に活用する業者が主体となる場づくりが大切だと考えるが、インスペクションの活用促進にどのように取り組むのか伺う。

4 【再質問】土木部長答弁

講習会において、宅建業者にインスペクションの活用を働きかけるとともに、積極的な宅建業者の協力を得て、具体的な活用促進策を検討していくほか、笠間市における補助制度の成功事例を他の市町村に紹介していく。


5 県立高等学校における魅力ある取組と次世代を担う人材育成について

ライフスキル教育により、自己の感情や態度を上手に表現するスキルを学ぶことで、子どもたちは他者から認められていると実感し、自分に自信が持てるようになる。人間関係の構築などに必要なコミュニケーション能力を育み、自己肯定感を高めるライフスキル教育は、きわめて有効である。
これまで、太田西山高校でのライフスキル教育必修化やその推進について質問してきた。同校では、ライフスキル教育を3年間継続した結果、地元での就職者が増加したり、国公立大学合格者が出たりするなど目覚ましい成果を挙げていると伺っている。
太田西山高校のように、ライフスキル教育を授業として組み込むことは、先進的で、魅力ある取組である。
そこで、太田西山高校におけるライフスキル教育の取組について、どのように評価されておられるか、また、それを踏まえ、次世代を担う人材育成をどのように進められるのか、教育長に伺う。

5 教育長答弁

太田西山高校では、開校以来、ライフスキル教育を通して、生徒たちの豊かなコミュニケーション能力と他者を思いやる心を培うとともに、主体的かつ積極的に社会参画する力の育成に取り組んでいるほか、与えられた条件の中で目標を作り、それを達成するための手順を考える時間を設けることで、主体的に課題解決しようとする力を身に付けている。
こうした教育で培った力は、「SEIZANプロジェクト」において生かされており、今年卒業した1期生の進路として、就職した71名のうち69名の就職先が県内の事業所となるほか、地域振興や農業振興についてより深く学ぶために、国立大学への進学を果たした生徒も輩出するなど、地域貢献を志す人材育成という点においても、成果が出てきている。
ライフスキル教育は、生きていくために必要なコミュニケーション能力を高め、学校や社会生活における人間関係作りの一助となっており、また、子どもたちの自尊心や自己有用感が高まり、主体的な行動ができるようになるなど、生徒のキャリア形成にも寄与する、先進的な取組であると考える。
このような魅力ある取組を広く周知することで、各学校の教育活動をより一層推進するとともに、引き続き、子どもたちの個性や能力に応じた教育を行い、次世代を担う人材育成に取り組んでいく。

再質問
このような先進的な取組が、今後も年度当初から支障なく実施できるようにするために、県としてどのように学校を支援していくのか伺う。

5 【再質問】教育長答弁

担当する教員の指導力向上のための研修等、外部団体との調整が必要とされる場合もある。年度当初から各学校で円滑に実施されるよう、学校との調整や必要な助言など、引き続き支援に取り組んでいく。


6 県北地域における県立高等学校の教育環境について

過疎化が進む地元常陸太田市では、現在は太田一高と太田西山高校の2校となっており、両校とも地域の県立高校としてなくてはならない存在である。
市内はもとより、周辺市町村からも生徒が通学し、通学手段の一つとして、両校の保護者会が共同でスクールバスを運行し、好評を頂いていると聞くが、料金設定が上手くいかず、運行が難しくなったことから、本年10月には、年度中途に料金の値上げをしなければならなくなるなど、生徒が安心して通学できる状況にあるとは言えない。
スクールバスの運行は、受益者負担であるが、生徒減少により継続運行が危惧される場合など、県としても、学校・保護者会と協力し、継続運行できる環境を整えていく必要があると考える。
例えば、スクールバスの利用料金が一定の基準額を超えた場合には、県が保護者会を支援するなど、スクールバスを継続運行できる方法を確立するためのモデル事業の実施を考えてみてはいかがか。
そこで、県立高等学校の魅力向上を後押しするためにも、県立高等学校において生徒が安心して通学できる教育環境のあり方(スクールバスへの支援など)について、教育長に伺う。

6 教育長答弁

各県立高校では、学校の特色を活かし、魅力ある学校づくりに取り組んでいるが、一部の県立高校においては、交通が不便な地域に立地し、通学手段が限られている場合がある。
県立高校の生徒は、主に自転車や公共交通機関などにより通学している一方で、交通が不便な地域や通学の利便性が低い地域に立地する一部の県立高校においては、保護者が中心となり、受益者負担によるスクールバスを運行している。
本年7月の調査結果では、今年度、高校25校、中等教育学校1校でスクールバスを運行し、約2,700人の生徒の通学手段として利用されている。
生徒の通学費用は、原則受益者負担であることから、保護者会が独自に運行するスクールバスにおいても、自立した運行・運営できる仕組みづくりが重要であり、また、安定して利用者が確保できるよう、入学を希望する生徒に選ばれる、魅力ある学校づくりが必要である。
スクールバスの運行が抱える課題を慎重に精査し、隣接校同士が互いに協力して行う共同運行の効果検証や、受益者負担のあり方など、安定的に運行できる仕組みや工夫改善に関する情報提供を行いながら、どのような支援が可能か検討していくとともに、県と学校が共に協力し、中学生から選ばれる学校づくりに取り組んでいく。